「はい、ありがと。3q先ね」
「・・・」
「あれっ。もう5q位来たけど工事なんかやってなかったよ」
「はい。工事は昨日で終わりました」
「昨日の情報を教えてくれたって役に立たないよ」
「一応、言ってみただけ」
「一応かよ。適当だな〜」
「13.23q先、××出口です」
「えらい細かいな〜」
「はい、一応大卒ですから」
「ふう〜ん。大卒ねえ。あれ??××出口みたいなところを通り越したみたいだよ」
「あなたって、標識をちゃんと見てないのね」
「だって、10q余りも先だって言ってたじゃないの」
「それは、あてずっぼ」
「あてずっぽ?・・・あてずっぽでなんか道案内するなよ」
「それでは、適当な場所で右折してください」
「おいおい、今、走っているのは高速道路だよ。右折なんかできるわけないじゃないか。中央分離帯があるんだよ」
「ん〜ん、じゃあ、仕方ありませんから、車を止めて、そのままバックしてください」
「ゲッ!高速道路でバックしろってか」
「だって、目的の出口を通り越してしまったんでしょ」
「そりゃあまあ、そうだけど」
「じゃあ、ゆっくりでいいですからバックしてください」
「バックなんか交通違反だよ。それに、こんなに車が多かったら事故になっちゃうよ」
「車が壊れたら板金すれば済むことでしょ」
「今度は、板金屋かよ。それよりも、この先の出口で出るから道案内を頼みますよ」
「そう、分かりました。ちょっと待ってね。今、私もカーナビで検索してみますから」
「えっ?カーナビがカーナビで調べるの??」
「はい、この先の道は私も通ったことがございませんので」
「通ったことがございません、じゃなくって、早く目的地への案内を頼みますよ」
「そろそろ休憩しませんか?」
「うん、まあ、休憩もいいが、パーキング・エリアなんか近くにありそうもないよ」
「じゃあ、路肩に止めて用足しをしてください」
「えっ、路肩に止めて小便をしろってか」
「自動車の蔭ですれば、見えませんから」
「見える、見えないの問題じゃあないよ。我慢するから休憩はいいよ」
「分かりました。それじゃあ、休憩は無しですね」
「そう。無しでいいですから」
「ところで、あなた、どこへ行くんでしたっけ」
「どこへ?自宅だよ。自宅」
「住所は?」
「だから、あんたカーナビなんでしょ。ちゃんと目的地として登録したじゃないの」
「ああ、埼玉県ね」
「そう」
「電話番号は?」
「電話番号?何で電話番号なんだよ」
「一応、確かめたかっただけ」
「○○○の○○番」
「分かりました。登録しておきます。次に生年月日は?」
「おいおい、生年月日まで必要なのかよ」
「本人確認が必要ですから」
「本人確認?個人情報だから言えないね」
「黙秘権を行使するのですね」
「おいおい、警察署じゃないんだからさ。何で裁判所みたいな言葉が出てくるんだよ」
「一応、大卒ですから」
「分かったよ。大卒はいいから、道案内を頼みますよ」
「え〜、次は△△出口〜。△△出口〜。お降りの方は足元にご注意ください」
「車で走っているのに、何で足元に注意が必要なんだよ」
「ちょっと、新幹線の真似をしただけ」
「おいおい、ここは高速道路だよ。新幹線の真似なんか必要ないからさ」
「分かりました。一度言ってみたかっただけ」
「そんな真似はもういいよ」
「そんなにカッカ、カッカしないの。血圧が上がるわよ」
「放っとけ」
「はい、△△出口をちゃんと出れましたね。あなたお利口さんね〜」
「今度は、子ども扱いかよ」
「後は、一本道ですので、道案内を終了します。お疲れさまでした」
「まだ、自宅に着いていないよ」
「大丈夫、後は、標識を見ながら走れば自宅に着きますから。それじゃあ、バイバ〜イ」
ブチッ!!(電源の切れる音)