<序>
それは、春も終わりの頃のことであった。
家内が会員になっている某社の景品付きアンケートに回答を寄せたところ、何と1等賞が当たった。
カタログ賞品で、家内は、
「さて、何にしようか・・・」
と、カタログを手にして迷った。
そして、決めたのが仙台市内にある「ホテル・佐勘」での昼食付き日帰り入浴の旅であった。
平成27年10月8日(木)
7:45頃、自宅を出発する。
関越〜外環〜東北自動車道へと入る。
東北自動車道に入った途端に大渋滞発生。
後方からサイレンを鳴らした緊急自動車が何台も追い越して行った。
どうやら、交通事故が発生したらしい。ノロノロ走ること約1時間。
事故現場は交通規制が敷かれて、どうやら、大型トラック3台の玉突き事故らしかった。
事故現場を通り過ぎたら、割合とスムーズに走れるようになったが、すでに、時計の針は9:00近くになっていた。
「ホテル・佐勘」へは12:00頃到着予定にしていたが、大幅に遅れている。
とりあえず、家内が佐勘へ「遅れそうだ」とTELをすると、
「結構ですよ。お気をつけてお越し下さいませ」
との返事。
私は、やや安堵のため息をつく。
しかし、またしても難問が控えていた。
風が強いのだ。とにかく、ハンドルが取られそうになるくらい横風が強い。
後で知ったことではあるが、台風23号が温帯低気圧に変わっての仕業らしかった。
何でも、東北新幹線でさえ運休をしたとか・・・。
少々、スピード・オーバーをしながらも、パーキングに立ち寄ることもせず、ただひたすらに車を走らせた。
仙台南ICを降りたのは12:30頃であった。そこからは、カーナビの通りに走り、秋保温泉街へと入った。
「ホテル・佐勘」は、まさに、温泉街の中心地にあった。
13:00頃、無事「ホテル・佐勘」到着。
フロントで手続きを始めると、実際には、11:00〜14:30らしかったのだが、
「お疲れさまでございました。どうぞ、16:00でも17:00まででも結構でございますので、ごゆっくりなさってくださいませ」
と、気遣ってくれた。
ロビーは広い。とにかく広い。
「千年の湯煙」とうたっているだけあってか、ホームページで検索したら、建物は近代的に建て替えられていたが、宿の歴史はかなり古いらしい。
休憩の間が用意されており、「紅一」という部屋であった。
和室ではあったが、テーブルにやや低めのイス席であった。
足の不自由な私にとっては、実にくつろぐことができるオモテナシであった。
部屋でマッタリすることしばし、やがて、料理が運ばれてきた。
トン・シャブに小鉢が幾つも並んだ「華弁当」らしかった。
味もさすがに一流ホテルだけあって、どれもこれも手が込んでいて美味しい。
アッという間にペロリと平らげてしまった。
食後、家内は「せっかく来たのだから」と、露天風呂へ向かったが、私は、少々お疲れ気味。
風呂へは入らず畳の上にゴロリ。ややウトウトッとしたみたい。
時計を見たら、すでに15:30過ぎであった。
予定では、松島の「瑞巌寺」を見物してから、今宵の宿に入るつもりであったが、、
「止めた! 時間がないから、このまま宿へ向かおう」
と言うことで、「ホテル・佐勘」を後にして、宿泊予約をしてある松島湾に面した「ホテル・絶景の館」へ
向かうこととした。
「ホテル・絶景の館」はやや小高い丘の上にあった。16:30頃到着する。
それほど大きなホテルではなかったが、こじんまりしているところがまた良い。
和室の部屋へ入り、まず目に飛び込んだのは、言うまでもなく「松島湾」のまさに
「絶景!!」であった。
宿の案内をしてくれた係の人の説明もそこそこに、私は窓にしがみついた。
窓からの絶景・福浦島と福浦橋
(夜間には福浦橋はライトアップされていた)
宿の気遣いも実に嬉しい。
予約の折から、
「足の不自由な方はいらっしゃいませんか?」
との配慮。
「私は少々足が不自由ですが、階段の上り下りには、特に支障はありません」
と答えていたが、
何と何と、大浴場や露天風呂は地下1階であったが、階段には
簡易エレベーターが設置されていたのだ。
これだけお年寄りや障害者に気を配る宿は、はっきり言って、これまで幾つもの宿に泊まっては来たが、
初めてであった。
玄関口でもスロープを設置してあり、館内もできるだけバリア・フリーに造られている。さらに、大浴場にも湯舟への手すりとスロープもある。
お年寄りや障害者が安心して泊まれる宿。実に嬉しいじゃありませんか・・・。
そして、大浴場からも露天風呂からも松島湾が一望できた。
温泉は「アルカリ性単純温泉」と「低張性アルカリ性高温泉」と2種類あるらしかった。
私は、もちろん露天風呂に身を沈めた。
冷たく吹き抜けるやや強い風が頬に当たって痛いが、風呂の温度はやや高めで、実に気持ちが良い。
入浴客はまばらだったので、手足を思いっきり踏ん張ってみた。そして、いつもよりは長めに肩まで
浸かった。(露天風呂付部屋もあったからであろう)。
私が部屋へ帰ってから、家内も風呂へ入ったが、帰って来るなり、
「お父さん、肌がツルッツルよ」
と、上機嫌であった。
やがて、夕食の時間となったが、これまた驚くことが一つ。
最近は、どこの旅館やホテルでも大広間でのバイキング形式が多い中、何と何と、
部屋食だったのだ。
仲居さんの教育?もしっかりしており、部屋の前で必ず手を付いて深々と腰を折る。
何か「殿さま」になったような錯覚に陥ってしまった。
料理は、品数はやや少なかったが、ボリュームは満点。
私は、チューハイで喉を潤しながら、一口一口を噛みしめた。なかなかしっかりした味でどれも美味しい。
だが、「佐勘」での昼食が遅かったためと、ただただ車の運転だけで、全く身体を動かしていなかったため、ついには、折角の料理を少し残してしまった。モッタイナイ!!
一生懸命作ってくださったのに、ゴメンナサイ。
夕食も終わり、膳が片づけられて布団が敷かれた。
家内は、しばらくTVを見ていたらしいが、私は、少々の疲れとホロ酔い気分で、21:00頃、布団に入ると
すぐに眠りについてしまった。
平成27年10月9日(金)
天気は申し分のない秋晴れ。風もおさまっていた。
松島湾に昇る朝日を見ながら、気持ちの良い朝を迎えることができた。
気分爽快!! 今日も一日いいことあるぞ〜・・・。
今日は、松島湾内クルーズを予定していた。
「ホテル・絶景の館」での朝食も終えて、清算も終えた。
松島湾内クルーズの情報を仕入れようとフロント係の方と話をしていたら、
「そうですね〜。船の乗り場はここから車でしたら5〜6分ですが、あの周辺は皆有料駐車場なんですよ。
もしよろしければ、車は当館に置いて、足がご不自由なようですので、ホテルの車でお送りいたしましょうか?」
「えっ!? 本当ですか? それは嬉しい。願ってもないことです。ぜひお願いできますか」
「ええ、いいですよ」
何と何と、全く予期せぬありがたい申し出であった。
すぐにホテルの車が用意され、私たちは車で船乗り場まで楽々と行くことができた。
まさに、プチ・ホテルだからできる、そう 「小回りの利く」 心配りであったのだ。
宿泊客全員に、このような「特別サービス」はしてはいられないと思うのだが、前述のように、お年寄りや
障害者に実に良く手の行き届いた心配りに感謝するとともに感心した。
松島湾内クルーズでは、「割引券」を持参していたので、通常1,500円のところ1割引きの1,350円であった。(ちなみに、パソコンで検索すると、割引券が表示され、それをブリントアウトして持参して下さい)
私たちは、それぞれ600円を追加して、2階の展望席に陣取った。
9:00丁度に「仁王丸」が出港。大小幾つもの島々の間を縫うようにして船は進む。
島々には、それぞれに名前が付けられてあり、また、その由来などもアナウンスされていた。
風も波もおだやかで約50分の船旅を満喫する。
船を降りて、家内は近くの土産物店で買い物をする。
私は、しばしタバコをくゆらせて喫煙場所で待っていた。
==さて、これからどうやって「絶景の館」まで帰ろうか・・・==
家内が土産物店で聞いた話では、仙台駅前にしかタクシー乗り場はなく、仙台駅前へ歩いては10分位。
また、「絶景の館」までは徒歩では15分位とのことであった。
土産物店の方が「タクシーを呼んであげましょうか」と言ってくれたらしいが、「迎え料金」もかかるため、
家内は「絶景の館」まで歩くつもりだったらしい。
だが、私にはとても歩ける距離ではない。
「絶景の館」の送って下さった方が、
「帰りも、連絡をしてくれれば迎えに来てあげますよ」
とは言ってはくれていたが、そうそう甘えてばかりもいられない。
==はてさて、どうしたものか・・・・・==
と、その時である。
何と、どうやら仙台駅からのお客を乗せたタクシーが目の前に止まったではないか。
渡りに舟とばかりにタクシーを呼び止めると、
「どうぞ」
と一声。
ラッキー! 助かった!!
「絶景の館」まではワン・メーターであったが、気持ち良く送ってくれた。
フロントに顔を出し、特別サービスのお礼を言うとフロント係のお兄さんと俄然意気投合。
帰り際には名刺を下さった。「赤間」さんと言う方らしかった。
ありがとう赤間さん。本当にお世話になりました赤間さん。
また機会があれば是非とも泊まりたい宿の一つになりました。
さて、いよいよ帰る時間だ。
「絶景の館」を後にして、カーナビの通りに走り、やがて東北道へ入った。
しかし、ガスメーターを見るとガソリンは1/5位しかない。
家内に、会員カードを持っているコスモ石油の給油所のあるSAをスマホで探させたら、
「
アダチタロウって言うSAにあるらしいわよ」
とのこと。
==アダチタロウ??? へえ〜、そんなSAあったかな〜==
ガスメーターと睨めっこで、それでも吾妻PAで喜多方ラーメンを食べた。
もう大分以前だが、磐越道を通った時、どこかのSAで食べた喜多方ラーメンがとても美味しかったからだ。
だが、この店は磐越道の店とは違っていたのか、そこそこの味でしかなかった。
それでも、腹は一応は満腹となり、再び車を走らせた。
「何と言うSAだったっけ」
と、家内に再び聞くと、
「だから、アダチタロウって言うSAだとさっきから言ってるでしょうに」
と、ブスった。
私は、再び首を捻った。そして、
==分かった!
安達太良SAのことだな!!==
そこで家内に、
「それは、アダタラSAじゃないのか?」
と言うと、
「アダチタロウって言うの! しつっこいわねえ〜」
と、本気で怒り出した。
やがて、安達太良SAの看板が見えたので、
「あれを読んでみな」
と、私。
「あら、アダタラって書いてあるわ」
「お前な〜。高村光太郎の智恵子抄を知らないのか?==智恵子は言った、もう一度安達太良山を見たいと==って言うフレーズがあるだろ」
「うん、聞いたことがある」
「良く、アダチタロウが出てきたもんだな〜。学のない人は、これだからヤだね」
「だって、そう読めるじゃん」
車の中で二人は大爆笑であった。
そして、そして、安達太良SAの給油所もコスモではなく、他のメーカーであった。
「コスモじゃないじゃないか」
「だって、これがコスモのマークでしょ?」
「いつも給油しているカソリンスタンドのマークは覚えているか?」
「うん」
「ぜんぜん違うじゃないか」
「あら、そうね〜」
さっきのブスこきが、急におとなしくなった。
だが、まあいい。ここで入れるとしよう。
東北道を走りながら
「アダチタロウ」で何度笑ったことか・・・。
羽生PAでトイレ休憩をして、後は、一本道。
東北道〜外環〜関越道と走り、16:30頃、無事に「ただいま〜」。
仙台市内で見つけた面白い風景
えっ、郵便局でうなぎの蒲焼を売ってるの・・・??